作品No.4 日帰りクエスト

シリーズタイトル 日帰りクエスト
レーベル 角川スニーカー文庫
既刊 全4巻
発表形態 文庫書き下ろし(長編)
イラスト担当 鈴木雅久
メディアミックス コミック
備考  
独断によるジャンル 異世界召喚ファンタジー
管理人のお気に入り度 ★★★★
【解説と感想】

 この作品は、私が「神坂作品のファン」になるきっかけになった作品です。それまではあくまで「スレイヤーズファン」でした。基本的に作家で作品を選ばない私でしたが、99年の夏頃、本屋で見かけて、何気なく読んでみようかな、と思って買ったのが出会いでした(実はこのへんうろ覚えです…)。

 まず第一の印象は、やられた!っていうインパクト。物語は普通の女子高生である主人公のエリが、いきなりファンタジーチックな世界に召喚されてしまうところから始まります。そう、アニメ、マンガ、小説、ゲームなどではお約束のパターン。普通なら、「勇者様、世界を救って」、とか「元の世界に帰りたい…」とかいう展開になるわけですが、エリはここでガッツポーズ。驚きもせず、「こんなシチュエーション待っていた」と、やる気マンマン。この展開がお約束であることもあっさり宣言…。スレイヤーズの項で書いた、神坂作品のツボ、「お約束の打破」を使った見事な導入なわけです。さらにその後、エリは勇者などではなく、単に「異世界の実情を聞き出すために当たり障りのない人物を呼んだだけ…」と続いて、完全にお約束は崩れ去る…。これを読んだときは、「さすが神坂先生!」と脱帽しちゃいました。

 そんなお気楽なタッチで始まる日帰りクエストですが、内容はかなりシリアス。人は死にまくる…。エリは、性格こそ神坂主人公でありますが、だたの女子高生で戦闘力ほぼ皆無。戦争状態である異世界では何の役にも立たない…。そこは、ちょっとリアルですね。それでも、「自分の出来ることを」、と戦場に向かい、仲間を助けてしまうエリは、やっぱり神坂主人公だなーと思います。

 この作品のもう一つのもう一つの主題、と言いましょうか、メインになる部分は、ギオラムと人間の関係。ギオラムは人間と一緒で、自分が他の種族とは違う、特別な存在である、と思っている。私達の世界にはそういう「特別な」動物が一種類しかいないけど、「日帰り」の異世界には、二種類いたため、戦争状態になってしまっている、という感じで…。スレイヤーズでは、人間の光の部分がメインであるのに対し、この作品では、人間の闇の部分が強調されている傾向にあります。スレでは、人間が闇におぼれそうになっても、結局なりきれずに破れたり、「光」であるリナ達が闇をうち負かしたり、というイメージですよね。日帰りは、ひたすら醜い争い状態ですから…。個人では分かり合う事は出来ても、種族としては分かり合えないで終わってしまう、と言う…。そこも面白いポイントであります。

 と、言うことで、個人的にはかなり気に入ってます。

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